2008年07月17日

社会的ゆとりと趣味・写真


myanbunkaNitta.JPG一般庶民が趣味を楽しむには、社会の経済的・文化的な成熟とゆとりが必要である。ミャンマーへ行った時のこと、ガイドに「ヤンゴン(旧首都)にもオーケストラが有るか?有るなら演奏を聴きたいが」と尋ねたことがある。返事は、「有りません。有ったとしても、聴きに行く余裕はありません。」が返事であった。失礼な質問をしたと思った。確かにヤンゴンなど大都市の市民生活は一定水準に達しているように見えるとはいえ、水準以上の余分な分がゆとりであり、そのゆとり無くして余暇を楽しむ余裕は無いわけである。ヤンゴン市内には太平洋戦争期までバーマ(ビルマ、ミャンマー)を植民地にしていたイギリスの統治時代の建築物が多く残るが、オーケストラのような存在は元々戦前から無かったのか、あるいは戦後のネウィンによる社会主義的鎖国政策下で外国文化として抹殺されたのかもしれない。かつての圧政下、そして現在も庶民はゆとりを無くすと同時に、オーケストラが奏でる楽曲とは無縁な世界になってしまっているのが実情だ。現在においても欧米嫌いの政府の政策下で、モーツァルトやベートーヴェンなどのクラシック音楽の演奏会が開かれるとは思えない。
その一方で、モデルになってくれていた当時学生の女のコ(添付写真)でも竪琴(ビルマの竪琴)が弾けるなど、自国の楽器の演奏力が保持されていたことは、政策的なこともあるのだろうか。自国文化のみを賞賛して異国文化を卑下するとしたら、まったくバランス感覚に欠けているだろう。日本の場合、異国文化のみを優れたものとして鑑賞し、自国文化を蔑ろにしてきたバランス欠如は、現在の音楽教育にもあてはまる。逆に、異国文化を知らずに和の文化のみを称えるのも、井の中の蛙であろう。財政難からオーケストラへの助成金を減らす政策が大阪で考案されているが、他に減らす処があるだろうにと思う。オーケストラの存在はゆとりの象徴でもあるし、文化としての潤いであるからだ。オーケストラも無い社会になったら、それはオーケストラを持つことも出来ない未熟な社会と同等になってしまうことを意味する。大阪の政策から例を挙げたが、むろん和洋のバランス感覚でもって日本の伝統文化の再認識・普及には雅楽・能狂言・歌舞伎に文楽等々など古典芸術のみならず、民間芸能の保護をも願いたいものである。
写真の世界でも、趣味はそうである。最近、拙Blogで1977年に訪れた東ドイツについても記すことがある。その東ドイツではライカレンズなどが製造されていたが、主に輸出用であったろう。私が蒸気機関車を撮影していても、東ドイツ国民の蒸気機関車ファンがカメラを持って写している姿は全く見なかった。社会主義体制の下、写真を趣味として楽しむゆとりが東ドイツ国民あったとは思えない。写真の場合、カメラだけあっても写真趣味は成立しない。街に手軽に寄れる写真屋さんの存在やフィルムの入手が容易な物流など、、、東ドイツにはそれが無かったように思う。その点、蒸気機関車撮影趣味が発展したイギリス、西ドイツや日本は、鉄道もカメラも身近であるというゆとりある社会であったのだ。
添付写真は、2002年5月、ミャンマーのヤンゴンで撮影;Nikon F5、24−85mm、RHPV)
by HP【舞!組曲】www.photoland-aris.com/myanmar/
posted by gagaku at 21:00| Comment(4) | TrackBack(0) | ミャンマー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
格調高い写真ですね!
女性も竪琴も美しいです。
Posted by さぎ草 at 2008年07月21日 11:35
<さぎ草様   どうもです!

「ビルマの竪琴」という小説がありますでしょ。
上座部仏教では、僧侶は歌舞音曲は戒律で禁じられています。ビルマで日本人とはいえもし竪琴を
弾いていたら、僧侶ではありえません。
フィクションの世界としても、設定が無茶苦茶です。ミャンマーの僧侶に対して、失礼な話です。
Posted by Nitta at 2008年07月21日 20:08
いろいろありがとうございます。
そうなのですか・・・。納得できます。
Posted by さぎ草 at 2008年07月23日 22:05
<さぎ草様    どうもです!

小説なんだから、何でもアリの世界なんでしょう。
有りえない設定としって読むのは、SFやアクション映画でもみんなフィクションだから問題ないのですが。ただ、ビルマっていうと、日本人の知識としては「ビルマの竪琴」と「アウンサンスーチー」ですから、両方ともフィクションと知って楽しむ分には問題ないと思います。あっ、後者は実在の人物ですけどね(苦笑)。
Posted by Nitta at 2008年07月24日 20:46
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